財務モデリングとは
M&Aにおける財務モデリングとは、M&Aの対象会社または対象事業のシナリオ別の事業計画を作成し、M&Aによる投資採算等のシミュレーションを実施することです。
事業計画にはPL計画のみではなく、それと連動するBS計画、資金計画も含まれます。これらを合わせて3表計画を財務モデルに落とし込み、様々なパラメータで感応度分析を行います。
財務モデリングの実務
①PL計画
PL計画(損益計画)では、まず対象会社または対象事業で重要となるKPIを抽出します。たとえば売上高を構成する新規登録数・既存登録数・新規登録単価・月額課金単価が重要であれば、その項目を乗算する形でモデルに落とし込みます。
さらに、これらの業績指標のうち、将来変化することを想定する項目についてはパラメータ(変数)として設定し、シナリオ別(ポジティブ・ベース・コンサバ等)に変動できるようにします。
同様にして売上原価や販管費も重要度に応じて、より詳細な構成要素に分解した上で、変動費や純固定費のみを可変とします。また、シナリオにはM&Aにより創出されるシナジーの織り込みも検討します。
②BS計画
BS計画(財務計画)では、PL計画の数値と連動させながら、主要な債権債務・運転資本の回転期間(回収サイト・支払サイト)を考慮して残高を算出し、その他の資産・負債は将来計画に基づき増減させます。
③資金計画
資金計画は、PL計画とBS計画から導出される資金残高を営業キャッシュフロー・投資キャッシュフロー・財務キャッシュフローの構成要素に分けて表現します。
最終的に出来上がった3表を用いて、内部収益率(IRR)等の投資判断指標を算出し、M&Aの実行可否や投資後の成長戦略策定等の意思決定に役立てます。
財務モデリングのポイント
財務モデリングを行うに当たっては、①説明可能性、②シンプルな構造、③再現性の担保 がポイントとなります。
①説明可能性
説明可能性とは、過去業績から将来計画に移行するにあたって、重要な業績指標が合理的な範囲で連続性を持っていることを指します。
たとえば計画2年目に登録数が急に10倍になっているが特段の根拠はない、ということでは実現可能性は低くならざるを得ません。
また、資金計画において、計画の途中で資金ショートしているということなどがあれば、それはもはや実行すべき計画ではなくなります。
策定した事業計画はM&A後の対象会社または対象事業の業績進捗に対する比較対象(ベンチマーク)となり、M&Aにより発生するのれんの減損検討の重要指標にもなるため、M&A後も見据えた慎重な策定が必要になります。
②シンプルな構造
財務モデルの作成上、可能な限りモデルの構造はシンプルにして、可変するパラメータも重要なものに絞ることが望ましいです。
必要以上に構造を複雑化しパラメータも多くすると、事後的に前提を変更する場合などに時間がかかるばかりか、モデル内に不整合を生じさせるリスクも伴います。
③再現性の担保
モデリングを行うエクセル上では、なるべく高度な関数を使わず、誰が見てもモデルの構造を理解してアップデート可能な状態を目指します。
往々にしてモデルは複雑化しやすいものですが、そうなると担当者の属人的な好みやパラメータ連動の恣意性が生まれやすいため、他人が見ても思考プロセスを容易に再現できるモデルを心掛けることが重要です。
Stand by Cを起用する理由
①会計士ならではの精緻かつ現実的な計画策定
スタンドバイシーのメンバーは全員が公認会計士であり、これまでの会計監査・財務コンサルティング等の実績から3表の作成に慣れていることはもちろんのこと、一般的に「ザックリ計算」になりがちな減価償却・税金・税効果・のれんの償却・配当なども整合性を持った形でモデルに反映することが可能です。
②財務・税務デューデリジェンスとの一気通貫サポート
事業計画には、M&A実行前に行うデューデリジェンスで発見された収益減少影響額やコスト削減余地、簿外債務等も反映することになります。
スタンドバイシーではデューデリジェンス業務と合わせて財務モデリングのご依頼を頂くケースも多く、デューデリジェンスと財務モデリングを一貫して行うことで、デューデリジェンスの発見事項を漏れなく精緻にモデルに反映することができます。
また、財務モデリングとデューデリジェンスは基本的に同一チームで対応するため、内容確認等のコミュニケーションコストも抑えることが可能になります。
③豊富な案件実績
スタンドバイシーは特にシビアな投資判断が求められる大手総合商社やPEファンドのクライアント様からのご依頼も多く、案件ごとにクライアント様のニーズに合った形にカスタマイズした事業計画を策定しているため、投資判断の勘所を押さえた財務モデリングをスピーディーに行うことが可能です。