デューデリジェンス(DD)とは
デューデリジェンス(Due Diligence)とは、M&Aや出資の対象となる会社・事業を詳細に調査する業務です。M&Aを実行するべきか否かの判断をサポートする有意な情報を網羅的に検出するとともに、PMIにつながるイシューを頭出しすることも近年のDDの主なスコープとなっています。
デューデリジェンスの種類
デューデリジェンス(DD)の範囲は多岐にわたり、財務DD・税務DD・法務DD・ビジネスDD・システムDD・人事DD・環境DDなどの種類がありますが、一般的には財務DD・税務DD・法務DDのセットで実施されることが多いです。
財務デューデリジェンス
スタンドバイシーでは、財務DD・税務DDをメインに行っており、財務DDは主に下記のスコープで実施します。
- ①財政状態(BS)
- ②損益状況(PL)
- ③資金繰りの状況(CF)
- ④内部統制・管理体制
①財政状態(BS)の調査
基準日(一般的に調査日に近い月末)時点での実態純資産を調査し、M&Aによるシナジー等を考慮しない状態での価値を把握します。
「実態純資産」とは、主には下記調整を反映した、実態ベースの純資産を指します。
- BSに反映されていない簿外債務
- 資産・負債の含み損益
- M&A実行により発生する調整 (退任役員の退職金、不要資産の処分等)
- 会計基準や会計処理の差異 (特に上場企業が未上場企業を買収する場合)
簿外債務の典型例としては、下記が挙げられます。
- 各種引当金の不足または未計上
- 未払残業代
- 契約から生じる偶発債務・潜在債務
調査の過程で発見されたリスク要因は、下記の対応を行うのが一般的です。
- 定量化が可能なものは買収価格への反映
- 定量化できないものは契約内での担保(表明保証への追記等)
②損益状況(PL)の調査
過去3期~5期程度の業績推移に基づき、収益構造やコスト構造を分析した上で、その変化理由を調査し、対象会社・対象事業がM&A後(投資後)に生み出すと期待される正常収益力を把握します。
正常収益力とは、財務会計上のPLに対して下記調整を反映した収益力を指します。
- 非経常的・一時的に発生した収益・費用の除外
- 経常的に発生している営業外損益を営業利益の修正として反映
- 対象期間中に終了した事業やM&A後に終了が予定されている事業に係る収益・費用の除外
- M&A後に不要/必要となる費用を調整
- 粉飾決算や節税による影響額を調整(該当ある場合)
③資金繰りの状況(CF)の調査
過去3期程度のキャッシュフロー推移から季節性や最低限必要な資金水準を把握することで、M&A後(投資後)に追加で必要なキャッシュ水準を分析します。
具体的には、営業キャッシュフロー・投資キャッシュフロー・財務キャッシュフローが月次ベースでどのような変遷を経てきたかを明らかにすることで、経常的なフリーキャッシュフローの水準を把握します。
また、必要に応じて日次ベースでの資金残高につき、最高水準・最低水準が月中の何日に訪れるか等についても詳細分析します。
④内部統制・管理体制の調査
対象会社の決算体制(人員数・業務分掌状況、会計ソフト等)や業務フロー、承認体制などを確認します。
管理体制が十分と言えない対象会社の場合、月次・年次決算の締め日状況、内部統制の状況、IPO準備状況等を把握し、M&A後(PMI)での改善ポイントを提示します。
また、カーブアウトにより事業のみを譲り受ける場合は、本社機能として提供されていたバックオフィス・ミドルオフィス業務等を抽出し、M&A後の一定期間は売り手のサービスを継続的に享受することを規定したTSA(Transition Service Agreement)を必要に応じて締結するようご提案します。
税務デューデリジェンス
(税務デューデリジェンスは、税理士法人Stand by Cからご提供します)
税務DDでは主に①過去の法人税等の申告状況、②税務面の管理体制を調査します。
①過去の法人税等の申告状況の調査
主に税務上の加減算項目等の調整内容を確認し、処理誤りや申告漏れが発見された場合は、課税リスクについてその推定影響額を算出します。
②税務面の管理体制の調査
社内の税金計算・申告体制、顧問税理士の業務範囲、過去の税務調査の状況等を把握し、M&A後(PMI)での改善ポイントを提示します。
財務・税務DDを依頼する上でのポイント
財務・税務デューデリジェンスをアドバイザーへ依頼する際には、デューデリジェンスを実施する目的とデューデリジェンスで明らかにしたい事項(SOW: Scope of Work)を明確化することがポイントとなります。
デューデリジェンスは通常2週間から1ヶ月程度と短期間で実施されることが一般的です。
したがって限られた時間内では調査の深度も内容により異なってくるため、あらかじめ優先順位を決めておくことが重要です。
デューデリジェンスの目的としては、主に下記があげられます。
- 投資にあたっての顕在リスク・潜在リスクの網羅的な検出
- 投資後のダウンサイド項目・アップサイド項目の網羅的な検出
- 検出事項の買収価格・契約内容への反映
- ストラクチャー決定に必要な情報取得
- M&A後の統合作業(PMI)に必要な情報の取得
- 株主・取締役等への説明責任の遂行
- ファンド案件の場合はモデリングへの反映とレンダーへの各種説明
上記のどこに重きを置いているか、投資検討の早期段階にデューデリジェンス実施者と共有することで、調査結果の有用性が高まります。
同様に、投資家目線による潜在的リスクの想定や、シナジーを定量化する上で詳細な調査が必要な項目等について事前に共有することで、投資検討プロセスや投資後のPMIに有用な報告書となります。