退職金型1円ストック・オプションとは
上場企業における役員向けの退職金プラン(役員退職慰労金の代替プラン)として用いられることが多い新株予約権です。
退職金型1円ストック・オプションの会計
種類 | 発行価格 | 行使価格 | 発行会社の 損金性 | 受け手の税務 | 主な評価 手法 | 決議方法 |
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上場後に発行される1円ストック・オプション | 無償発行が多い | 1円 | 〇 (権利行使時) | 〇 退職時にのみ行使可能とすることで、税率の低い退職所得課税とすることが可能 | ブラック・ ショールズ | 株主総会 特別決議 |
上表のとおり、ストック・オプション自体の価値はブラック・ショールズ法で計算されるのが一般的であり、原則的にはこの価値評価額が対象勤務期間(ストック・オプションの権利が確定するまでの期間)にわたり、費用処理されます。
無償発行かつ行使価格1円とすると、発行時点の株価終値から1円を控除した金額がストック・オプションの公正価値となることが多いため、例えば株価が100円であれば99円(100円-1円)に相当する金額が将来にわたり費用処理されます。
また、発行体の税務上は、毎期の費用を一時差異として扱い、権利行使時に一括損金算入することとなります。
受け手の税務
退職金型1円ストック・オプション自体は非適格ストック・オプションに該当し、権利行使時に給与課税されることが原則となります。
そこで、上場企業が役員向けの退職金プランとして用いる場合、権利行使時の所得税課税において、退職所得として扱われるような設計が必要となります。
事例として、株式会社伊藤園が「新株予約権を割り当てられた時に就任していた会社の役員を退任した翌日から10日以内のみ権利行使可能」なストック・オプションは、その権利行使時の課税関係を退職所得として差し支えないか事前照会を行い、東京国税局から差し支えない旨の文書回答を2004年11月に得ています。
基本的には、上記の照会結果に準拠した形での行使条件を設定することで、受け手の所得税において退職所得として取り扱われ、給与所得の場合に比べて手取りが増加することとなります。
スタンドバイシーの報酬テーブル
退職金型1円ストック・オプションの設計自体は汎用的なため、その仕組みを理解している弁護士・司法書士であれば、どなたでも募集要項・割当契約書・各種議事録・登記実務につき対応可能です。
退職金型1円ストック・オプションに関してスタンドバイシーにご依頼いただくケースとしては、第三者評価としての新株予約権の公正価値評価に関するご依頼が最も多く、場合によっては設計支援・開示支援などが合わさることとなります。
概ねの報酬テーブルとして50万円~100万円程度をご提案することが多く、特殊な設計等をご検討されている場合は、その都度のご相談とさせて頂きます。